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『会長はなぜ自殺したか−金融腐敗=呪縛の検証−』 読売新聞社会部 新潮文庫
 第一勧業銀行・野村證券等と総会屋との癒着の歴史と金融腐敗の赤裸々な暴露本

本書の内容

 九一年六月、バブルがはじけて株が暴落していった時、野村証券は、法人損失百六十億円を穴埋めしていたという事実が発覚した。しかし、野村證券の抵抗と巧妙な隠蔽工作のため、その全容解明は阻止され、結局のところ解明されたのは、七つの法人顧客に対する八十九億九千円だけだった。そこには深い闇があったのである。
 それから六年後の九七年三月、児玉誉士夫をバックにした木島力也の跡目を継ぐ総会屋小池隆一に対する利益供与事件の捜査は、野村から第一勧銀へ、さらに山一・日興・大和の各証券まで及び、その中で四件の接待汚職と新井将敬衆議院議員に対する利益供与事件も摘発された。
 逮捕者は四十五人、事件の発覚により辞任した会社役員と官僚は、八十三人、過剰接待と認定され処分を受けた大蔵省と日銀の職員は二百十四人。そして、自殺者は、第一勧銀元会長の宮崎氏や新井将敬らの六人で、日本金融史に残る未曾有の事件となった。
 東京地検特捜部幹部が、「この事件の相手は一企業ではなく、経済の五五体制と呼ぶべきものだ」と言ったごとく、銀行・証券会社と総会屋との癒着と金融腐敗は、実に根深いものがある。
 この本は、読売新聞社の延べ四十一人の記者が、五百人以上の関係者に会って得た十一冊、千頁の証言メモをもとにして書かれたものである。掛け値なしに優れたドキュメントに仕上がっている。

本書の構成

 本書の構成は、以下のようなものである。

 プロローグ
 第一章 癒着の系譜
     本店捜索
     三十一階の引き継ぎ
     伝  説
     フィクサーの死
     三人の総会屋
 第二章 発覚と混迷
     「ブツに聞け」
     迷  走
   告  白
査  問
 第三章 会長はなぜ死んだか
     責任のとりかた
     葉隠の国で
     DとKの不作為
     四大証券の呪縛
     潜む総会屋
 第四章 腐食の連鎖
     MOF担の「常識」
     天の声
     賄賂接待
     裁量という名の権力
     御殿女中
 第五章 権力の誘惑
     被疑者死亡
     証券族の呪縛
     二つの顔
     攻  防
     権力の闇
 あとがき
 文庫化にあたっての付記

本書から学ぶもの

 八二年の商法改正で、総会屋の取り締まりは厳しくなった。この頃から総会屋は機関誌や情報誌を出すようになった。驚くべきは、警察もびっくりしたその金額である。
「四大証券や第一勧銀の利益供与事件後、警視庁が総会屋情報誌の購読打ち切りを指導した。その後、東京に本社を置く上場・店頭登録企業三百二十八社が情報誌の購読を打ち切ったと報告してきたが、その購読料は推定で年間二百億円以上にのぼっていた。中には社内各部署で購入し、年間三億円も払ったり、一種類の情報誌を百部以上も購入したりする企業もあった」
 このように企業が闇社会を肥大させているのである。会社には、総務部という名の「社内総会屋」がいて、「社外総務部」という名の総会屋と日常的にトラブルを処理している。
 総会屋と総務部との癒着が発覚するたびに、企業トップは「私は知らなかった」と頭を下げる。解雇された総務部員も自分の一存でやったと罪をかぶる。解雇されながらも一生面倒を見る話が付いているのだと本書は教えてくれる。
 では、企業はどうして総会屋と手を切れないのか。総会屋自身は、「企業のトップが総会の混乱さえ恐れなくなれば、自分たちは失業だ」と断言する。
 この本は、様々な問題意識を持って読める本である。特に第四章などは、日本の官僚の腐敗を徹底的に暴いている。また、この四月から、第一勧銀はみずほ銀行になったが、大量の振り替え不能事件の発生は、危機意識なきトップが引き起こした人災なのである。この本によって第一勧銀の体質は徹底的に明らかにされている。さらに一時期改革派の旗手として脚光を浴びていた新井将敬が、実業家と政治家の二つの顔を持つ人物であったことも明らかにされている。今話題の秘書給料も、彼はしっかりとピンハネしていたのだ。
 第一勧銀元会長と新井将敬の自殺によって、金融界に巣くった闇の勢力の全容解明は中断されてしまった。今不良債権の陰には暴力団が入ると言われている。そうであるに違いない。本書を読めば誰もがそのように考えるだろう。一読を勧めたい。(ワーカーズ 猪)


日本がアメリカの軛を脱するには沖縄基地という「ベルリンの壁」を壊すことだ−チャルマーズ・ジョンソン氏の沖縄論を論評する

 『サピオ』の六月十二日号に、表題になったチャルマーズ・ジョンソン氏の沖縄論が掲載されている。実に興味深い論文なので、以下に論評していきたい。

チャルマーズ・ジョンソン氏の日本論の核心

 アメリカは戦後約六十年、第二次世界大戦の勝利の遺産をタテに日本に軍事基地を置き、アメリカの好みにあった諸政策を日本に高圧的に押しつけてきた。今の日本はそのアメリカの軍事的、経済的ヘゲモニーの下で機能しているのにすぎない。つまり日本はアメリカによって割り当てられた範囲の中で外交政策を立案、実施しており、その政策のほとんどが国際社会におけるアメリカの目標を達成させるための補完的な役割を果たしているにすぎないのだ。その意味では悲しいことだが、日本政府は先進民主主義国の中でも最も破滅的に不能な政府の一つだと言っていいだろう。 

 以上が、チャルマーズ・ジョンソン氏の日本論の核心である。それにしても、これまでの日本がアメリカの軍事的、経済的ヘゲモニーの下で機能していたにすぎないと言い切るのは、何とも見事という他はない。
 私自身、遅々とした足取りながら、日本の「失われた十年」を研究しているが、戦後の日米関係にその謎を解く鍵があると考えているところである。

チャルマーズ・ジョンソン氏の自民党・小泉論

 一九四九年以降、政権の座についてきた自民党は腐敗し、無能化しているだけではない。遺物化しているのだ。かつて反共の橋頭堡としての役割も、官僚制支配の「公の表紙」としての役割も今や無用の長物になってしまった。
 確かに二〇〇一年四月、自民党の一般党員たちが大ボスや幹部たちが推す総裁候補を蹴って、変人だがカリスマ性のある小泉純一郎氏を選んだときには、陳腐で古めかしい自民党に新しい息吹がでたのではないかと思わせた。だが、その小泉首相が実質よりスタイル、真の改革よりも口先だけの変革に終始し始めるやいなや国民はその見せ掛けのリーダーシップに再び失望してしまったというのが現状ではなかろうか。

 こうしたことを言いながら、チャルマーズ・ジョンソン氏は、今日本が必要としているのは、アジアにおけるアメリカン・ヘゲモニーに終止符を打つ、本物の政治指導者が実権を握れるような政治システムを作り出し、再び産業政策を打ち出せる人物の登場を切望している。もちろん、チャルマーズ・ジョンソン氏は民主党とは明言していないが。
 しかし、これは叶わぬ夢でしかない。この窮状を打開できるのは、私たち労働者の他にはいないのである。

チャルマーズ・ジョソン氏の沖縄論

 なぜアメリカは沖縄に地上軍を駐留させておきたいのであろう。
 その第一の理由はカネだ。日本政府は沖縄や田の日本国内に米海兵隊や他の部隊を駐留させているのに必要な経費を二十億ドルも支払っている。これは他の「同盟国」に比べたら非常に気前のいい話だ。
 沖縄は一九世紀に日本に力ずくで併合された日本の本州とは異質の文化を持つ国家だった。その意味ではアメリカがプエルトリコやハワイを併合したのによく似ている。そうしたこともあって日本人は沖縄県民に対して、かつて植民地化した朝鮮や中国、台湾の人々に対して抱いているのと同じような根強い優越感を持っている。事実、アメリカはこうした点を踏まえて日本全土土地面積の一・六%しか満たない沖縄に七五%の米軍基地を置くという差別的な政策をとってきた。
 今ひとつ、米軍が沖縄を手放さない理由は、沖縄が好きだからだ。生活環境は米本土よりずっといい。すべての施設は米軍経営で、地元沖縄当局の管轄権は一切及ばない。これこそ米軍が沖縄から出てゆきたがらない大きなインセンティブになっている。
 また米軍の沖縄駐留は米兵による地元婦女子に対する暴行、傷害事件を生み、殺人事件まで起こしている。飲酒運転していた米兵たちのひき逃げ事件、環境汚染、住民たちの市民生活を絶え間なく妨害する戦闘機やヘリコプターの騒音などそのどれ一つとってみても、アメリカ市民だったら絶対に許されない行為である。

 チャルマーズ・ジョンソン氏の沖縄論は、ここで読むことができるように極めて的確なものだといえる。ここには、一部の日本人の意識における沖縄に対する差別意識を明確に指摘している。沖縄の闘いが、なぜ全国化しないかは、私たち自身に突きつけられた問題でもある。

チャルマーズ・ジョンソン氏の「沖縄はアジアの『ベルリンの壁』論」

 沖縄はかつてのベルリンの壁によく似ている。それは日本および他の東アジア地域全体をアメリカが占領しているというシンボルである。もし沖縄が反植民地的反乱を起こしたら東アジアのアメリカン・パワーの牙城は音を立てて崩れ落ちるだろう。
 ペンタゴンとその追従者である日本政府は間断なき圧力で沖縄県民の抵抗をくじいてきた。沖縄県民は日本の国会には何らの影響力もない。外務省はアメリカというパトロンのために沖縄県民を食い物にし続けてきた。
 そうした中で沖縄県民はもはや圧制者への直接的な抵抗は諦め、日本政府から出来るだけカネを引き出そうという戦術に切り換えたかに見える。沖縄県民は県知事や重要な市の市長に親自民の人間を選んでいるし、国内最悪の失業率にあえぐ若者たちは本土政府からの助成金増額のみを望んでいるというのが現状なのだ。
 そうした中で、沖縄問題を平和裡に解決する方法は、日本政府がアメリカに対し沖縄からの米軍撤退を「懇願」せざるを得ないような、大規模な大衆蜂起を誘発させる「事件」でも起こることだ。

 チャルマーズ・ジョンソン氏は、右翼的な人物である。その人がここまで言うのである。
 私たちはもっと大胆に、さらに大胆に闘っていく必要があるのではないだろうか。

チャルマーズ・ジョンソン氏の結論

 日本政府のそうしたスタンスは中国や他のアジア諸国から賞賛されるだろうし、それこそ日本がついに成熟した独立民主主義国家となったことを示すシグナルにもなるだろう。

 最後は、チャルマーズ・ジョンソン氏の持論である「どんなに苦しくとも日本は自立しろ」と言う結論になった。彼の、アメリカの衛星国家としての日本から、独立国として、米国とはじめとする貿易相手国との互恵的な通商関係を築くべきだという提言は、日本社会の全面的な社会革命をめざす私たちにとっても、十分傾聴に値する。
 私たちは、小泉政権が今回画策している有事立法に向けた闘いの中で、チャルマーズ・ジョンソン氏の言うように、沖縄での大衆行動の発展を企図し、沖縄をアジアの「ベルリンの壁」とすべく、反戦平和闘争を拡大発展させていかなければならないだろう。
 ワーカーズとともに闘おう。                 (ワーカーズ 直)

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